TCKコラム

TCK Column vol.69

東京大賞典出走予定馬特集

 今年で51回目を迎える東京大賞典。真冬のダートチャンピオン決定戦が刻々と近づいてきました。南関東からは3世代に渡ったダービー馬、またTCKの若き大将が名前を連ねています。ここでは改めて、南関東の有力メンバーをしっかりチェックしていきましょう。なお今回はスペシャルゲストとしまして、過去にこの東京大賞典を5度制している(騎手3回、調教師2回)赤間清松調教師にもご協力頂きましたぁ。 (12月21日現在)


スペシャルゲスト 赤間清松調教師

 ■ アジュディミツオー 船橋 川島正行厩舎 牡4歳
生産 藤川ファーム(静内)

* 重賞タイトル:東京大賞典、東京ダービー、東京湾カップ
* 前走:JCDは地方のチャンピオンとして満を持して登場したのですが、10着と惨敗。スタートが決まったアジュディミツオーは2番手からの競馬。4コーナー手前では少しずつ下がっていき、最後はずるずる後退してしまいました。レース直後、陣営にお話しを聞くと…川島調教師は「今日はスタートがいいんだものなぁ。もう少し後ろで競馬をさせたかった。レコードが出るタイムで、この位置からは厳しいよなぁ」と。内田騎手は「気配は良かったですよ。スタートも良かったし、最初は少し行きたがったので、無理して抑えずにあの位置からになりました。道中は折り合いもついていたし、いい雰囲気でした。ただ、4コーナーの手前で手応えがなくなって…特に、ペースがきつい感じはなかったんですけど。距離でもないと思います。うーん。生き物だからこういう時もありますよ。これも、経験だと思って次に生かしたいです」ということ。レース後、右前脚が落鉄していたこともわかりました…
* 近況:18日、中間追い切りを行いました。いつものように佐藤裕太騎手が跨り、今回は単走で。「まだちょっと重いかなぁとは思いますが、ここから調子を上げてくるのがミツオーですから」(佐藤裕太騎手)レースがわかる賢いタイプなので、レースの10日前になるとググーッと調子を上げてくるのが、アジュディミツオーの本来の姿。昨年の東京大賞典も、そうだったなぁ…なんて、ちょっと思い出しました。

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JCD10着時

★赤間清松調教師のワンポイント★
「JCDは負けていますが、馬体やレース運びなどを見ると、状態は全快していると思います。弾力性のある体で雰囲気もいいですよ。体重が増えているようだけど、時計も出ているし成長分ということでしょう。その辺りは、陣営が一番考えていることですから。調教をしっかりしながら、10キロ増えたり20キロ増えたりするのは、私もまったく気にしませんね。2,000メートルを2分2秒台で2回も走っているわけですが、これは限界のタイムというくらい凄いことだと思います。この馬の持ちタイムは別格の数字でしょう」

■ ナイキアディライト 船橋 出川龍一厩舎 牡5歳
生産 ハシモトファーム(新冠)

* 重賞タイトル:東京ダービー、羽田盃、かしわ記念、日本テレビ盃、マイルグランプリ、京浜盃、ブルーバードカップ
* 前走:JBCクラシックでは、ゲート裏でまさかの座り込み…こんなナイキアディライトの姿は初めでした。ただ、船橋から名古屋に行く際も馬運車に乗らなかったり、弥富トレセンから名古屋競馬場に向かう時の馬運車にも乗ることを嫌がったり…またレースでも、「興奮していて背中が硬かった」(石崎駿騎手)と。すべてにおいて、ナイキアディライトらしくない面が出て9着に終わりました。頭が非常にいいタイプだけに、何か思うことがあっての行動だったのか…これは、ナイキアディライト自身に聞くしかわからないことですが、怪我などもまったくせずに無事だったことが何よりです。脚の毛がちょぴっとむけただけでしたから(レースでは他のお馬さんたちもあること。人間で言えば擦りむいた程度かな)。よくナイキアディライトのことを表現するときに、「無事是名馬」という言葉を使いますが、改めて痛感した一戦でした。
* 近況:自分の力をまったく出していなかったので、レース直後も元気一杯。すぐに調教を開始しました。11月29日には船橋競馬場で調教試験を受けて、ゲート入りの不安は払しょく。試験時、ゲートの中にいる時間は1分間と決められていますが、ゲートにスーッと入って、その中で一歩も動かずに静止していた姿は印象的でした。「今度は慣れたコースだし、心配はないでしょう」と出川龍一調教師。

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JCD10着時

■ シーチャリオット 船橋 川島正行厩舎 牡3歳
生産 Darley(アメリカ)

* 重賞タイトル:東京ダービー、羽田盃、京浜盃、平和賞
* 前走:11月23日に行われた京成盃グランドマイラーズで復帰。東京大賞典を見据えた仕上げもあったでしょうが、東京ダービー時よりも21キロ増えた(523キロ)逞しくなったシーチャリオットの姿がそこにはありました。骨折明けで、古馬との対決も57キロを背負うのも初めてと、いろんな試練が待ち構えていましたが、シーチャリオットなら軽くクリアーしてくれるだろうと、誰もが信じていたのですが…スタートではダッシュつかずに後方から。3コーナー手前あたりからは常に馬群に揉まれながらの厳しい競馬になりました。最後の直線では、ビューンと切れる脚はまったく見られず4着。内田騎手は「砂を被って嫌がっていました。本当はもう少しやれると思ったんだけど…。休み明けだから、かな」と。この厳しい経験は、シーチャリオットのこれからにとっても、大きな大きな経験になったはずです。
* 近況:クリス厩務員と豊田厩務員。川島厩舎が誇る長身コンビが、シーチャリオットの引き運動を主に担当しています。あまりにも飛んだり跳ねたりシーチャリオットの元気が良すぎるものだから、2人がかりでも大変そう…。「もう元気いっぱいねぇ」とクリス厩務員が苦笑いすれば、「クラシックの頃の元気のよさに戻ってきた感じです」と豊田厩務員。18日の中間追い切りは、今回コンビを組むことになる佐藤隆騎手が跨りました。「乗りやすい馬だね。体もだいぶデキている感じ」と好感触。

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京成盃グランドマイラーズ4着時

★赤間清松調教師のワンポイント★
「やはりどんな馬でも、骨折明けでいきなり古馬との対戦では厳しいと思いますよ。一度使って変わり身は出てくるでしょう。クラシックの頃に比べると、大人になってきた印象は持ちますね。さっきも言いましたが、調教タイムはしっかり出しているわけだし、10キロ、20キロの馬体の増加は気になりませんね。それにしても、このクラスに出てくる馬はみんな素晴らしい(笑)A級の中のA級ばかりだから。理屈ぬきにみんないい馬ばかりですよ」

■ ボンネビルレコード 大井・庄子連兵厩舎 牡3歳
生産 浜本幸雄(門別)

* 重賞タイトル:東京記念、黒潮盃
* 前走:二走前の古馬と初対決した東京記念は、3歳馬とは思えぬ貫禄溢れる差し切り勝ち。前走の準重賞・勝島賞は、東京大賞典に向けた大事な一戦ということで、どんな勝ち方をするか…そこに注目が集まりました。「11月中旬から本格的に乗り始めました。見た目で大きく変わった部分はないけれど、調教での姿勢が変わったかな。前はフワフワしていることもあったけど、今はしっかり集中していますから」と庄子調教師も目を細めていました。この日はスタートも決まり好位の競馬。3コーナーからクールアイバーと併せる形になり、マッチレース。ハナ差前に出たところがゴールでした。クールアイバー自身、仕上がり良好で、これまで揉まれてきた強さもあります。ボンネビルレコードにとって非常に厳しい戦いになりました。的場騎手は「スタートが良かったので前に位置取りました。ただ、前よりも切れる脚がなかった。でも、勝ちは勝ちですからね。前なんか、こういうクラスで勝てなかった馬だから、力はつけている証拠ですよ」ということ。東京大賞典を見据えた上での仕上げだったので、だいたい7、8分。どのくらい調子を上げてくるのか注目です。
* 近況:19日に中間追い切り。的場騎手がいつものように跨り、単走で。「前回よりも、動きはだいぶ軽くなっていますねぇ」と庄子調教師。あとは、25日の本追い切りを待つばかりとなりました。

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勝島賞1着時

★赤間清松調教師のワンポイント★
「柔らかいしがっちりした体型ですね。前走は、的場君も次を考えた乗り方だったんじゃないのかな。馬の良さを引き出すために意識することは、騎手にとっても大事なことです。初めての古馬相手に東京記念を勝ってしまうのだから、やはり相当強い馬だと思います。大井の中では一番有利でしょうね。先ほど言いましたが、大井2,000メートルは1コーナーまでの直線が長い分、逃げ馬にもいいだろうけど、先行馬や差し馬にとっても、ポジション取りがしやすいと思います。どの馬にとっても一番競馬がしやすいんじゃないかな。馬の力がそのまま出るでしょう」

<中央馬、他地区勢について>
 JCDではカネヒキリと死闘を演じてタイム差なしの2着になったシーキングザダイヤ、同じくタイム差なしの3着スターキングマン。今年3つのGⅠ(川崎記念、帝王賞、JBCクラシック)を制しているタイムパラドックス。マイルチャンピオンシップ南部杯の勝ち馬ユートピアと、ダートグレードレースには欠かせない好メンバーが集結します。また、地方競馬初登場になるべラージオも参戦。赤間調教師は「地方も中央も、このクラスに出てくる馬はみんないい馬ばかりですよ。JCD2着のシーキングザダイヤは、ゆったり歩いているけれども、スキがない。非常にいい雰囲気ですね。馬力もあるタイプだから、地方競馬のダートもまったく心配することがないでしょうし」


シーキングザダイヤ JCD2着時

 他地区代表としては、園田のニューシーストリーがかかんに参戦。名古屋で行われたJBCクラシックではタイムパラドックスの6馬身差の6着。その後、園田金盃では地元の強豪たちを破り、着実に力をつけています。大井は帝王賞(10着)以来ですが、ガッツ溢れる走りを期待したいところです。

<まとめ>
 この大事な一戦を取材する前に、風邪を引いてしまいました。うーっっ(涙)。お馬さんたちが完全なる状態で仕上げてくるわけですから、あたしもしっかり体調を整えなくては…皆さんもお体には気をつけて、ハードな年末を乗り切りましょう!なお、東京大賞典の各馬の直前情報に関しては、MXテレビ&CS120チャンネル内のTCK中継・Gステージの中でも総力取材でお届けします。そちらのほうもぜひご覧下さいね。
 雪が舞い散る中、アジュディミツオーが先頭でゴールを駆け抜けた昨年。あの光景はまだはっきりと脳裏に焼きついています。南関東にかかわるものとしても、本当に嬉しかった。今年はどんな戦いになるんだろう。

高橋華代子
東京シティ競馬中継レポーター
厩舎関係者にファンも多い。