TCKコラム

TCK Column vol.17

だれからも愛されるTCK誘導馬

競馬場に誘導馬がいるのがあたりまえになっていますが、戦後の日本競馬で、初めて誘導馬による先導を始めたのがTCKなのです。そして、現在活躍している誘導馬はめずらしいパロミノという金色の毛を持っています。また、誘導だけでなく、地域貢献などに参加しており、多くのファンから愛されている4頭の愛くるしい誘導馬を紹介しましょう。

カクテル光線に映えるパロミノとは?

現在、TCKには4頭の誘導馬が活躍しています。誘導馬とは、競走馬が本馬場へ入場する際に、競走馬を先導する馬のことです。
TCKの誘導馬の大きな特徴は、「毛色」にあります。その毛色はパロミノといって、鋳造されたばかりのコインのような金色のきれいな毛を持っています。たっぷりとしたたてがみや尻尾は白色で、銀色にも見えます。特にまばゆいトゥインクルのカクテル光線に照らされる金色と流麗な動きには、だれもが大きな魅力を感じずにはいられません。
実際、本馬場へ先導するときなど、スタンドのファンから「わあ、きれい」、「かわいい」といった声が多く聞かれます。また、スタンドの上階という遠方から見ても、その金色の馬体はとても目立つものです。

以前は芦毛の誘導馬もTCKには所属していましたが、トゥインクルレースを始めたのをきっかけに、照明に映えるような毛色を検討した結果、パロミノを導入したそうです。
では、この照明に映える「パロミノ」とは、品種なのでしょうか?
いえいえこれは品種ではなく、「毛色の種類」のことをいうのです。
パロミノが広く飼育されているのはアメリカです。カーボーイの馬といったほうが分かりやすいのではないでしょうか。その流麗な姿からパレード用としてだけでなく、乗馬用、ウエスタン競技用としても需要が高いのが特徴です。
それだけに、アメリカのパロミノ・ホース協会の努力で事実上品種としての地位を獲得しているのです。
パロミノは、その毛色や流麗な動きばかりが注目されてしまいますが、人間や音に動じず、人間は危害を加えないものだ、可愛がってくれるものだと思っており、とてもおとなしく、心優しい馬なのです。また、そのように飼育されているのです。
アメリカの馬に対する文化の広さ、深さには感心するばかりです。

4頭の名前は、小柄だけど兄貴分のプルーフ(8歳)、白面、ブルーアイという大きな特徴のテンダー(6歳)、おとなしいクレッセーノ(7歳)、誘導馬の兄貴はオレだといわんばかりに勢力争い(?)しているドルチェ(9歳)です。

テンダーはアパルーサ種、ほかの3頭はクォーターホース種です。4頭とも性格は穏やかで、すごく甘えん坊だそうです。競馬場のだれからも愛されており、騎手や厩務員さんからも可愛がってもらっているからでしょうか(笑)。

誘導馬員の金澤ふみえさんが、テンダーのあるエピソードを教えてくれました。「2年前のデビュー初日には2回も、競走馬の合間をぬって“暴走”したこともあるんですよ。きっとたくさんのファンの前で、見るもの、聞くもの初めてづくしで、ビックリしたんでしょうね。とてもやんちゃです」。

レース開催日の誘導馬の仕事は、とてもハードなものです。本馬場への誘導を多い日には11回も繰り返します。さらに、出番を待っている間は、パドックの横でつながれています。とにかく見た目以上に忍耐のいる仕事なのです。誘導馬に必要以上のストレスを与えないように、誘導馬員は気を使うそうです。
ただ日ごろの誘導馬の世話は、厩務員だけでなく誘導馬員も行っているだけに、誘導馬と誘導馬員の信頼関係があってこそ成り立つ、とても重要な仕事なのです。

ここで、みなさんにちょっと耳寄りな情報をお知らせいたします。
誘導が終わり、本馬場で折り返す際に、誘導馬ににんじんを与えています。このときクビを後ろに向けて、誘導馬員からにんじんをもらう仕草がたまらなく可愛いのです。機会があればじっくりと観察してください。にんじんは、誘導の仕事のご褒美として与えていると金澤ふみえさんが教えてくれました。

誘導馬の地域貢献TCKの新しい試み

今となっては、誘導馬は珍しくなく、むしろ競馬場に誘導馬がいるのが当たり前のようですが、実は戦後の日本競馬で、初めて誘導馬による先導を始めたのがTCKなのです。昭和25年の開設以来、52年間欠かさず行ってきた歴史あるものなのです。

ほかの公営競馬場の誘導馬は、乗馬クラブから開催期間中だけ乗馬用の馬を借り入れたり、JRAは引退した競走馬などが活躍していますが、TCKの誘導馬はTCK専属なのです。ですからTCK場内に専用の厩舎もあれば、放牧場もあります。「TCKは自分たちのホームグラウンドだという認識がTCK誘導馬から伝わってきます」と金澤ふみえさんは感じるそうです。

TCKの誘導馬は地域貢献にも役立っています。ご存知でしょか?
今年7月21日、千葉県印西市の千葉ニュータウンで「交通安全パレード」に登場しました。これは、TCK厩舎がある小林牧場が同市になることから、地元の交通安全に参加したのです。千葉ニュータウン内で、4頭の誘導馬がパレードや記念撮影会など、地域との触れ合いを行うと同時に、夏の交通安全運動の広報に協力したのです。

過去には「110番の日」にTCKから東京都品川区のJR大井町駅までパトカー、白バイに先導されながら、誘導馬でパレードを行い、110番広報に貢献しました。いつもは、競走馬を先導しているのですが、この日はちょっと事情が違ったようですね(笑)。

TCKの本馬場でも、年に1度乗馬教室を行っていて、できるだけ多くのファンが誘導馬に触れる機会を提供しています。誘導馬員も携わっています。
乗馬教室の参加者が、自分の乗馬した誘導馬を見つけて、時折スタンドから声をかけてくれるそうです。これほどファンのみなさんから愛される誘導馬は、ほかにはいないでしょうね。

誘導馬員の金澤ふみえさんは、誘導馬がどれだけ競馬に大切なものなのかを簡単に、分かりやすく教えてくれました。「馬は群れをなす動物。ゆえに、先頭についていく習性を持っています。それだけに誘導馬の役目はとても大切なのです」。

金色に輝くTCK誘導馬を見にTCKへ出かけてみてはいかがでしょうか。

副田 拓人
1968年「みゃー、だぎゃー」と言いながら名古屋に生まれる。
競馬フォーラム、競馬ゴールド、ラジオたんぱなどを経て、現在フリー編集者。