Café Americano

Café Americano vol.29

第29回 サンタアニタトロフィーからフランス・アルカナ8月1歳セールへ

ドラマティックな馬だったジャスティファイ

 今となっては周知のとおりですが、あの無敗の三冠馬・ジャスティファイは、なんというか、月並みな言葉で言えばあっという間の引退劇となりました。球節部に水が溜まる症状が治まらないことが、直接的な原因。仕方ありません、550キロを超す巨体です。それに彼は今や米国競馬の至宝。貴重で最高のスキャットダディの後継者として、次の世代を生み出すという大きな仕事が待っています。

 最初の出走からベルモントS制覇まで、わずか112日。もうこの記録を破れる馬は現れないでしょう。心からの「お疲れ様でした」を送りたいと思います。

今年の夏は暑かった・熱かった!

 毎年暑さが度を増している印象の日本の夏。私がサンタアニタトロフィーの仕事のために来日した日は大暑。羽田空港に到着した日の外気温は、39.9度・・・。一瞬でタクシーに飛び乗ったので、その瞬間はそうでもなかったのですが、30分ほど乗って目的地に到着し、運転手さんが「はーい、では開けまーす」と言われてドアを開けた瞬間、夏のラスベガス以上の熱気が一気に入ってきて、一瞬息が止まるような感覚を覚えました。「こ、この中で2週間も過ごすわけ・・・?」もう、このタイミングから既に汗だく。この暑さを耐え抜く日本人の方々に、心から敬意を表したいと思いました。

 今回、イベントプロジェクト開始前に訪問した先の一つに、TCK小林牧場がありました。「小林いいですよ〜」と、いつも言っていたTCK・田中正人調教師に加え、「小林の検疫施設なども一度見に来てください!」と場長さんにもオファーを頂き、今年は訪問を敢行。近くの駅前ホテルに前泊し、翌朝田中正人師に送迎していただきました。そして、到着直後すぐに田中師の「小林いいですよ〜」の意味がわかりました。

 まず、周りは森に囲まれていて自然は豊か。ミンミン鳴いている蝉たちの声が少し騒々しかったですが(写真1)、都会から離れているので、静かで馬もリラックスしている感じが見て取れます。

写真1

 また、特筆すべきは南関他場の馬も使用しに来場するという坂路。(写真2・3)ポリトラックを使用したオールウェザーコース。効果もかなり出ているようですが、また更に負荷がかかりやすいように改善されていくものと思われます。大井競馬の馬主の皆さん、「小林いいですよ〜!」

写真2
写真3

サンタアニタトロフィーはニシ・・・ヒガシウィルウィン!

 JRA騎手トークショーで、自身を和田譲治と言い切った和田竜二騎手が発したボケで貫きたいところですが、サンタアニタトロフィーを勝ったのはヒガシウィルウィン。馬の格で言えば勝って当然のところですが、ここ数戦の間は苦しんでいたようでしたから、主戦の森泰斗騎手も格別の勝利だったと思います。(写真4)

写真4

 今年は、サンタアニタ競馬場からピート・シバーレル氏が来場。2015年以来の訪日となりましたが、競馬場周辺住民や企業への誠実な対応から、地域社会で大きな信頼を獲得しているとともに、サンタアニタ競馬場を使用した映画やテレビ撮影のアレンジメント(映画「シービスケット」「セクレタリアト」など)や、グランドスタンドを使用して行われる地元高校の卒業式、はたまたコースを使って行なう結婚式・写真撮影のアレンジメントまで幅広く対応していらっしゃる同氏。今回も多忙な中、時間をやりくりして訪日してくださいました。当日昼の会食時には、既に気心の知れているTCK・斉藤副管理者とも会談し、TCK・サンタアニタ両競馬場の今後の事業及びさらなる発展にむけて、非常にポジティブな話し合いとなりました。(写真5)

写真5

番外編:フランス・アルカナ1歳セールへ

 今回は番外編も。サンタアニタトロフィーイベントから帰国して2週間経った後、お客様のご依頼でフランスはドーヴィルで行われたアルカナ1歳セールに行って参りました。プライベートでフランスには何度も行っていますが、馬のお仕事での訪問は初めて。いろいろな意味でカルチャーショックが続きました。馬のセリそのもののプロセスは、米国と比較してもそう大きく変わらないのですが、何よりも根底に流れている馬事文化が違いすぎるのです。私のTwitterにアップしたのですが、こんな光景が毎日普通に広がっています。

 毎朝、気がつくと外から馬の団体さんの足音が聞こえて目が覚めます。しかも1回や2回ではなく、けっこう延々と続きます。そしてそれを当たり前のごとく(道端にボロが落ちていたり、それをクルマが踏んづけたり)受け容れているのがドーヴィルという街なのです。夕日が沈んでいくなかで、海で馬に乗っている光景は圧巻。(写真6)年齢を重ねるに連れて感度が鈍ってきている私でも、さすがに感動を覚えました。

写真6

 競馬における文化の違いと言えば、フランスもだいたい30分おきぐらいにレースが開催されるのですが、なんとレースが終わった直後の内馬場では、ポロの試合が開催されているのです。全レース終了後ではないですよ、普通に2レースが終わった後などの空き時間に。

 次のパノラマ写真をご覧いただくと、内馬場の右側の方にトラクターが2台ほど止まっているスペースがあるのですが、この広い馬場でポロをやっています。(写真7)

写真7

 以上、マツコさんならぬ、沼本の知らない世界でした。

筆者:沼本光生
1980年東京生まれ。U.S. Equine, Inc., Sales & Operations Manager
U.S. Equineのホームページはこちら
たまに訪問したことのない第三国に行くと大きな刺激を受けます。競馬においては、上記のように日本や米国とは異なった異色の馬事文化にめぐりあうこともあるので、やはり外に出ていき刺激を受けることは大事なことだなと毎回思います。凝り固まった価値観がぶち壊されるのは快感ですよね。