Café Americano

Café Americano vol.16

第16回 本家本元のブリーダーズカップがいよいよ目前!今年のメンバーは熱い!

なんとも微妙な気候のアメリカ合衆国です。

 今月上旬のロサンゼルス近郊は、大変な暑さとなり、おそらく10月としては記録的なのではないでしょうか。おかげで私も妻も、はたまたベイビーな息子くんも大汗をかく寝苦しい夜を過ごしていました。私の家は比較的海に近いので、夜になると冷たい海風が吹き抜けてくるのですが、この時だけは別。夜は全く風が吹かず、窓を開け放して寝ても朝には汗だくの自分を見つけるのです。サンタアニタ競馬場のあるArcadiaは、我が家の地域よりも気温が高いところ。おウマちゃんたちも、非常にストレスフルな時を過ごしていたのではないでしょうか。
 ちょっとだけ涼しくなったな~と思った矢先に、先日はおウマちゃんたちの輸送がありシカゴに出張。事前に気温を調べてみると、もうシカゴは冬。到着後、外に出たら息が白くなるほど。先が思いやられましたが、雨が降らなかったのは幸いでした。合計で31頭のおウマちゃんたちがいたのですが、7頭ほどはシカゴ到着後に大変リラックスされていまして・・・。今までで一番横たわって寝ている馬が多かったです(写真参照)。

米国中にある同じ名前のレースの本家本元

 ブリーダーズカップ。今や世界中の競馬関係者・ファンにおいて、その名前を知らない人はいないと思います。米国競馬関係者にとっては、一年の競馬の締めくくりであり、終了後からがスタートです。年末は、サンタアニタ競馬場はオープニングデーですし、東海岸も暖かいフロリダのガルフストリームパーク競馬場を拠点に動き始めます。みなドバイワールドカップ前の3月を一つのメド(ステップレースのため)に、準備を始めていくのです。

 北米には、いくつもブリーダーズカップ(BC)という名前がついたレースが存在しています。ナイアガラブリーダーズカップハンディキャップ、ファイアクラッカーブリーダーズカップハンディキャップ・・・などなど、米国でセールのカタログを紐解くと、「お、BC勝ってる!」と勘違いしてしまうレース名が多いのです。それらが掲載されるのは、ブラックタイプに載るリステッドレース(日本で言えばオープン以上でしょうか)のため、それなりの実力を示していると言えるのですが、紛らわしいといえば紛らわしいですよね。でも、10月末に開催されるのが本家本元です。

 今年の注目は、何といっても強豪たちが激突するクラシックディヴィジョン。BCクラシックは、ドバイWCと並んで世界のダートホースの頂点を決めるレースと言っても過言ではありませんが、今年は特にスゴイ!大変に見ごたえのあるレース、また賭けるのに困ってしまうレースではないでしょうか。

 言わずと知れた37年ぶりの3冠馬・アメリカンフェイロー。前走のトラヴァーズステークスでは、キーンアイスに3/4馬身差をつけられての2着。久しぶりに土がついたのですが、今回はどのように巻き返してくるのか。ボブ・バファート師、ビクター・エスピノーザ騎手の作戦に興味津々です。サンタアニタでの最終追い切りを見ると、後ろから追走して4角先頭で押し切る内容。最後になる今回のレースは控える競馬となるのでしょうか。

 コンテンダーとして名前を挙げている2頭目は、現役最強牝馬・ビホールダー。昨年ファシグティプトンセールのカタログに名前が載ったという信じられない過去を持ちますが、今年は連戦連勝。ゼニヤッタ以来の名牝として、国内外から注目を集める存在。今月、東京大賞典のプロモーションのためリチャード・マンデラ師に直接確認した際には、「まだ来年走るかはわからない」とのことでしたが、今回のレース結果によっては、来年のスケジュールが大幅に変わる可能性があります。勝ったらドバイWC・・・でしょうか。

 この2頭に食い込んできて欲しいのが、オナーコードとトーナリスト。オナーコードは、久しぶりに見る追い込み一辺倒の馬。前走のメトロポリタンHは最後方から追走し、直線に入ると安々と前を行く馬たちを捉え、あっという間に先頭でゴール。逃げるアメリカンフェイローを後ろから捉えられるとすれば、後方待機・ヨーイドンの競馬で競り合えるとすれば、この馬でしょう。そして、トーナリストは言わずと知れた昨年のベルモントS優勝馬。常に善戦を続けるこの馬は、前走のジョッキークラブゴールドカップで、雨降りで田んぼのような馬場の中を圧勝。3冠競走の優勝馬として、その矜持を見せつける結果となりました。期待が大きい2頭です。

 もう1頭。個人的な思い入れも含めて、エフィネックスに票を投じないわけにはいかないでしょう。今年の東京大賞典に、予備登録をした唯一の陣営。サバーバンHでは先述のトーナリストに土をつけ、その後も一線級で善戦しています。人気は穴・・・なのですが、「絶対」がない競馬においては十分に巻き返す可能性アリです。BCクラシックを勝って東京大賞典へ・・・。そんな流れが今年出来たら、それはそれで楽しめそうですね。

 アメリカンフェイローを中心に、強豪12頭が大激突するBCクラシック。日本のGIはトライアル2着で・・・という出走馬がいますが、毎年BCクラシックは全馬が重賞勝ち馬。そこにグレンイーグルスの参戦が本決まりとなれば・・・見応えのあるレースになりそうです。

唯一の不安は・・・

 皆さん、ネットケイバ連載中の合田さんのコラムは読まれましたか?合田さんが詳述されている通りなのですが、唯一の不安は馬のコンディションでもなく天気でもなく、競馬場とレキシントンの街なのです。Googleさんのお力を借りて、まず図1で解説です。
 左側に見えるのがキーンランド競馬場です。そして、その前をVersailles Roadが走っています。右側の大きなマルが幹線道路のNew Circleです。この幹線道路も、フリーウェイ部分と一般道路部分が混ざっていて不完全な道なのですが、今年キーンランド周辺部分の道が「拡張されて」片側3車線・・・。キーンランドは5万人以上を集客するつもりでいるようですが、この小さなフリーウェイ&一般道が「大渋滞しない」という想像が出来ません。ここを通らないと、主だったホテルへの移動に余計な時間がかかることを余儀なくされますから、渋滞しないはずがありません。
 このマルの内側はダウンタウンですが、街の規模は比較的こぢんまりとした感じ。お金持ちが行くような高級料理店の数は限られていますし、評判のいいお店は既に各馬の陣営に予約されてしまっているでしょうから、夕食難民が街にあふれることでしょう(私たちはファーストフードでもいいのですが)。

図1

 図2には、ブルーグラス空港とキーンランド競馬場の距離を示してみました。空港を出ると、あっという間に競馬場に到着します。我々が競りで入るときには、朝に空港到着後、スススっと競馬場に行って業務開始!もしくはホテルでチェックインしてしまうのですが、今回はどうでしょう。レンタカーを借りても、空港を出るまでにとんでもない時間がかかりそうですね。そして前述のNew Circleは大渋滞でしょうから、空港前のマンノウォーストリートを通って大きく迂回していく以外ないかもしれません。空港自体も大きくないので、インフラも含めてどこまで捌けるのか。11月1日に空港に降り立つのを楽しみにしたいと思います(笑)

図2

 そして一番大きな心配事は、図3。ズバリ、キーンランド競馬場です。席数が足りない部分は、仮設スタンド設立により解決しているようですが、なんとこの競馬場、出口が3つしかないんです。しかも、そのうちの一つは裏口(厩舎地区)なので、馬や厩舎で働く人たちの安全面を考慮して、おそらく一般車は通さないのではないかと思っています(上の赤マルですね)。各出口へ向かう道は片側2車線。駐車場は黄色く括ったグランドスタンド近くと、右上の丘の上あたり。駐車場から出るのも苦労。出てから一般道に出るのも苦労。出たら大渋滞。そんな姿が容易に思い浮かびます。東京の感じでいきますと、東京ドームで巨人・阪神戦を観戦した後、お客さんがみんな車でたった3つしかない出口をめがけて出ていく。出た先は人と車で混雑する外堀通りと白山通り。どうでしょう、少しはイメージ湧きましたか?電車で行きたいところですが、レキシントンには公共交通機関が、本数の少ないバスしかないので・・・。我慢するしかないですね。

図3

 その翌日に始まるファシグティプトンセール、そのまた翌日からキーンランドブリーディングストックセールが11日間続きます。米国競馬業界における、今年最後の大イベント。その後は、英国・タタソールです。