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平成24年の勝ち馬プレティオラスには、多少地味な印象を持っている方もいるかもしれない。ダービー後、5年に亘る競走生活を見返すと決して軽んじる言葉は出てこないのだが、少なくとも東京ダービーへと至る過程でこの馬が優駿馬の称号を戴くであろうとは、想像しづらかったように思う。

ダービーまでのステップに要したレース数13戦。これは近10年で中央からの移籍馬を除けば最多レース数だ。勝ち鞍に至っては転入緒戦の条件戦を勝った後は6戦未勝利の身。秘める可能性を信じる陣営としては何とかゲートインに漕ぎ着けようとミーティングを重ね、①着必達のトライアルを回避して、強豪ひしめく羽田盃での権利獲りに挑むことにした。とはいえ、そのハードルは高く、羽田盃時点で賞金もようやく300万を超えた程度ではブービー人気も仕方のないところだったろう。

レースでは確かに離れた位置から桁違いの決め脚を駆使、③着同着に持ち込み何とか権利をもぎとったが、一般的な見立ては一番人気パンタレイを上位陣が潰しにかかった挙句の乱ペース。展開に乗じたイメージは拭えず、前評判は相変わらず低いままだった。

実際、走りすぎた面があったのだろうか、比較的頑健なこの馬が羽田盃直後からカイ葉を残すようになったという。「自分のリズムで運べば、終い凄い脚を使う」と、この馬の能力を見抜いていた森下調教師もさすがに困惑したようだが、試行錯誤の末、エン麦を炊飯器で炊いて消化の助けにしたという。

結果、夢の舞台に向けて「この馬のストロングポイントが明確になっていたし、状態に関しては2歳冬に転籍してきて以来、一番の状態」と、納得の仕上げで臨むことができた。

紙面が尽きるのでレース回顧はリプレイ映像で振り返ってもらうとして、実はこのレースには同厩僚馬としてプーラヴィーダも送り出されていたことを覚えていらっしゃるだろうか。こちらは前哨戦でハイレベルの兵庫CS③着。堂々たる人気の一角を占めていた。結果、プレティオラスの豪脚には涙を呑んだが、正攻法の競馬で②着に好走。同一馬主、所属厩舎馬のワンツー決着を演出した。そしてレースが終わればノーサイド。ウィナーズサークルでは両頭が顔を揃え、口取り写真におさまる大団円で幕を閉じた。

時は過ぎて令和2年。プレティオラスは故郷のサンシャイン牧場に里帰りして種牡馬に供され、今年初年度産駒が誕生。「仔出しがいい」と評判だし、父フィガロの後継馬として期待されている。

ケイシュウNEWS 高橋 孝太郎