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2019年1月10日、クリソライト号の引退が発表された。通算成績39戦9勝。重賞勝ちはダイオライト記念3連覇を含む6勝。海外でもコリアカップで1着、2着と奮闘した。それがキッカケとなったのか、第二の馬生を種牡馬として韓国で送ることとなり、同年2月27日に彼の地へと飛び立った。同馬にとって最初で最後となったJpnIタイトル・第15回ジャパンダートダービーを振り返る。

デビュー2戦目で勝ち上がったクリソライトは、昇級後、500万条件特別を4戦連続で2着。すべて1番人気に支持されて、着差はそれぞれ0秒2、アタマ、ハナ、0秒1。力負けというより運がないといったレースばかりだった。潮目が変わったのは黒竹賞を使って放牧へ出された後。レース前に「休養で間違いなく力をつけている」と、管理する音無調教師が語っていたように、この放牧により体がひと回り成長。2013年4月の復帰戦を7馬身差で圧勝し、返す刀でオープン特別の昇竜Sをも制覇。まるで別馬のような勝負強さを発揮し始めた。弾みをつけて、いざ3歳ダート王決定戦へ。鞍上に配したのは大井で頂点を極めた内田博幸騎手。まさに必勝の構えだった。

「前へ行ってくれ(音無師)」というアドバイス通り、名手はスタートひと息だったパートナーに対し、テンから気合をつけて好位5番手の内目を確保。道中はジッとやり過ごし、3角手前に差しかかると前が壁にならないよう、絶妙なタイミングで外へ出してルートを築く。まさに、大井競馬場を攻略するお手本のような騎乗ぶり。この時点で勝負あった。「この馬はバテる馬じゃないので、早目早目に少しずつ上がっていた(内田騎手)」とのことで、4角を過ぎて早くも先頭へ。直線半ばでは更に一段、ギアが入りアッという間に後続を突き放した。7馬身差は、2002年に勝った父ゴールドアリュールと同じこのレースにおける最大の着差。そして、史上初となる父子制覇が実現した。

世代最強の称号を手に入れ、前途洋洋かに思われたが、古馬になってからは再び、善戦止まりのケースが頻繁となった。前述したダイオライト記念や日本テレビ盃、浦和記念とJpnIIは何度も勝つのだが、肝心のJpnIではJBCクラシック、帝王賞の2着が最高。結局、2度目の美酒に酔うことなく、現役を退いた。

2019年のジャパンダートダービーには、デビューから3戦無敗を誇るクリソベリルが出走を表明している。父はゴールドアリュール、母はクリソプレーズ。すなわちクリソライトの全弟だ。時は平成から令和に変わり、為し得なかった古馬最高グレード制覇の夢は兄から弟へ託される。今度はレース史上初となる兄弟制覇の偉業がかかる一戦。7月10日……その日が待ち遠しい。