レースヒストリー

 上半期の南関東競馬、古馬頂上決戦とも言えるのが帝王賞。近年で一番のインパクトを与えるレースをしたのは、恐らく2011年の覇者スマートファルコンだろう。マイペースの逃げで上がり3ハロン36秒0、芝のレースを走っているのではと勘違いするような時計で後続に1秒8差の大楽勝。自身のキャリアで最大着差での圧勝劇だった。

 そんなスマートファルコン、デビュー当初から逃げ馬だったのか…答えはノー。逃げ切ることもあったが、基本的には好位抜け出しというレースが主流だった。新馬、3戦目をダートで勝利、続くジュニアカップでは初の芝を苦にすることなく快勝。3歳春シーズンは芝のクラシック路線を歩むこととなった。しかし、重賞では歯が立たず皐月賞後は再びダートへ。大井初登場となった交流GⅠジャパンダートダービー2着で改めてダート適性の高さを実証。続くKBC杯では古馬の壁を突破、白山大賞典で待望の重賞タイトルを手中に収め、JBCスプリント2着後は交流重賞6連勝と世代トップレベルに登りつめた。

 しかし、2010年の帝王賞では南関東大将格のフリオーソに敗れ6着。当時、重賞で10勝を挙げていたが、GⅠタイトルには縁がなかったスマートファルコン。悲願のタイトル奪取に向け、ここでひとつ大きな転機が訪れる。武豊騎手とのコンビ結成だ。

 初コンビの日本テレビ盃は好位からレースを進めたが、勝ったフリオーソからは0秒5差の3着と敗れた。そしてコンビ2戦目となったJBCクラシックでスマートファルコンが目覚める。大外枠から迷うことなくハナを切ると、2着フリオーソに1秒3差の楽勝で待望のGⅠ初制覇。ここから快進撃が始まり、GⅠ6勝を含む9連勝と大活躍。2010年の東京大賞典でマークした2分0秒4は大井二千メートルでは驚異のレコードタイム。翌2011年には帝王賞、JBCクラシック、東京大賞典と大井競馬場で行われた古馬二千メートルの交流GⅠを完全制覇。武豊騎手に導かれ見事にシフトチェンジをして、国内の地方ダートでは敵なしという絶対的な地位を築いたのであった。

 「管理馬で同じレースを使ったことがあるけど、いいペースで逃げているはずなのに追走する方が一杯になっちゃう。それで直線もうひと伸びするのだから、やはり力が違った」と話をするのは、大井競馬調教師会会長を務める三坂盛雄調教師。来年デビュー予定の初年度産駒も管理をしており、父スマートファルコンの印象を聞くと、「父に似て、スピードタイプな印象があるね。体も丈夫そうだし、遺伝力があると思うよ。馬産地での評判もいいので、種牡馬としても成功してくれることを期待しています」と、来年の今頃が楽しみになるコメント。

 異国の地ドバイでも好走を期待されたが、ドバイワールドカップでは本来のパフォーマンスを発揮することができず敗戦。そのまま引退の運びとなったが、スマートファルコンが見せた圧倒的な強さは今でも鮮明に記憶に残っている。あれから4年、今年は久々にJBC競走が大井競馬場に帰ってくる。競馬の祭典に向け、現在は新スタンドの建設工事が行われており、秋には様変わりした大井競馬場となっていることだろう。スマートファルコン同様に、帝王賞の覇者が充実の夏を経て秋に再び参戦することを期待しつつ、レースを楽しむことにしよう。

ケイシュウニュース 藤田裕之


第34回 帝王賞【レース結果
優勝馬:スマートファルコン