第28回 JDC [JpnI]
トップページ

レースヒストリー

Japan Dirt Classic

 ジャパンダートクラシックは、今回が28回目と数えられるが、その25回まではジャパンダートダービーとして実施されていた。2024年のダート競馬の改変により、現在は中央競馬を交えた〝ダート三冠〟の最後の一冠として行われている。
 その歴史を第1回から観てきたが、大井の長い直線で絶賛と感嘆、両方の大声援が巻き起こったインパクトある記憶になっているのが2021年の第23回のキャッスルトップだ。

 見事な逃亡劇だった。
 キャッスルトップ(船橋・渋谷信博厩舎)は、スタートからハナを主張して単騎で飛ばした。向正面では13秒台に落として息を入れながらの逃げ。そのぶん勝負どころからもうひとつギアを上げることができた。
 直線では横に広がる大混戦となったが、道中ラクをしているぶん最後まで先頭を譲らなかった。
 勝利のゴールを駆け抜けると、馬上から拳を突き上げて喜びを表す仲野光馬(かづま)騎手。デビューから8年目での初重賞制覇はJpnⅠの大金星だった。

 予想も馬券も外れてしまったけれど、〝競馬には夢があるな〟となぜかニヤニヤしている自分がいた。競馬馬関係者も生産者もそしてファンも、この結果にそう感じた人は多かったのではないだろうか。
 キャッスルトップは、補欠6番目から繰り上がって出走にこぎ着けたB3クラス馬。
 13頭立ての12番人気で、単勝は12,950円ついた。

 「キャッスルトップにとって大井競馬場は初コースだったので、返し馬にも気を使ってコーナーの回りなどを確認させたりしましたが、馬に気負いもなく集中もしていました。ゲートがあいた瞬間、自分の馬のスタートが一番良かったと感じて〝もしかしたら考えていた一番いいかたちになるかもしれない〟と先手を主張しました。意外と冷静な自分に驚いたくらいです。あれだけ出していっても引っ掛かる馬ではなく、自分からフワッとする馬なので、テンの2ハロンさえ飛ばしていけばそのあとはきっとペースが落ちるのはわかっていました。その通り向正面の2ハロンを13秒台に落とせたのが勝因だと思います。後ろから来ればまたハミを取るので、3コーナー手前で全体に詰め寄られたときにもうまく反応してくれた。直線では内外から来ているのがわかったけど、この日は馬場の内側が伸びないのも知っていたので、外の馬を意識してそこに併せてもう一度ハミを取るかどうかに懸けました。そしたら来たぶん伸びてくれて、こんなにうまくいくことってあるんだろうかと自分でも思います」と仲野騎手がレースをふり返った。

 いくつもの描いていたパターンの中で最高の結果を引き出したキャッスルトップと仲野騎手。
 「デビュー前から調教に乗っていた馬ですが、自分が怪我をしていた時に他の騎手が勝っていたので、復帰しても僕に戻ってこないだろうと半ばあきらめていたら、〝これからもカヅマで行くぞ〟と渋谷先生から言ってもらってうれしかったことを覚えています。勝って馬が自信をつけたのか調教の動きから変わってきた。他の馬がいないと遊んで止まってしまう面もあるんですが、その次の浦和でもその遊んでいる間のラップが一番速かった。自分の中で可能性を感じる勝ち方でした。不器用で大味な競馬しかできなかったのが確実にゲート出られるようになって走り出すと自分からハミを取るようになったので、好きにさせるというより馬に寄り添ってみようと考えるようになりました」。
 この時がデビューから8年目。キャッスルトップを仕上げながら、騎手として学んだことも多かった。

 仲野光馬騎手は、1990年に杉並で生まれて府中で育った。
 競馬好きの父親と一緒に競馬場に行くうちに騎手になる夢ができ、中学2年から府中乗馬スポーツ少年団に入った。
 高校に行きながらJRA試験を受け続けたが合格には届かず。大学に進学するかとなったときに地方の試験を受けて第88期生になった。ところが修了まであと2ヶ月になったところで退学。「この技術でやっていけるのかと自信を失って心が折れてしまって」といったんは競馬の世界を離れた。それでも騎手の道を諦めきれず20歳の時に川島正行調教師に手紙を書いて直談判。川島厩舎では調教厩務員として0からスタートした。「当時は(佐藤)裕太さん、江川さん、(高橋)利幸さん、(山下)貴之さん、(川島)正太郎さんと5人の所属騎手がいて、僕に馬乗りを教えようとお手製の馬の模型を作って指導してくれたことに感謝ですね。騎手の一発試験を4回目で受かるまでには当時、川島厩舎にいたクラーベセクレタやマズルブラスト、マグニフィカの調教に跨がる機会もありました」。

 晴れて24歳の6月に騎手デビュー。勝負服のデザインは子供の頃に有馬記念を映像で見て以来、すっかりファンになっていたダイユウサクをイメージした柄にした。
 〝いつかダイユウサクのようなアッと驚かせて大きな花を咲かせる”という願いも込めたのだと言う。その願い通りにジャパンダートダービーでアッと驚かせる騎乗を仲野騎手は見せた。


競馬ブック 中川 明美