競馬専門誌記者たちの東京大賞典ベストレース

第56回 東京大賞典(2010/12/29 勝ち馬:スマートファルコン号 騎手:武豊)

 思い出というにはまだ早いが昨年のスマートファルコンには驚かされた。
 フリオーソとの逃げ争いを制して先頭に。3F34秒台と速いペース。道中もゆるぎないペースで飛ばしていき4コーナーでは更に突き放すスピード。最後の直線フリオーソに詰め寄られたとはいえ完勝といえる内容だった。逃げてたたき出した時計で、今までのレコードを1.7秒縮める走り。近年はスピード志向の馬場で時計が出やすいとはいえ本物の強さだったと思う。(少し寂しいのは新聞のコースレコードの欄から地元の馬の名前が消えてしまうことだが。)
 父ゴールドアリュールは2002年に同レースを勝っている。父子制覇の血統の魅力、そして両馬とも武豊騎手が鞍上とここにも競馬の面白さが見える。
 中央に在籍していながら地方競馬場を中心にレースを使われ強くなってきた馬で親近感もわく。アジュディミツオーの2連覇を抜かすような活躍を期待したい馬。
 昨年のレース映像がNARのHPで見ることができるので是非ご覧ください。

大井TM 鬼嶋努

第39回 東京大賞典(1993/12/29 勝ち馬:ホワイトシルバー 騎手:荒山勝徳)

 ホワイトシルバーはテンに行く脚はないものの、道中掛かる癖があった。それをなだめて直線勝負に賭けても入線止まり。
 掛かったところで行かせてみようと、荒山勝徳騎手(現調教師)が決めていたのがグランドチャンピオン2000。
 3角先頭、誰もが早仕掛け、直線止まると思ったが、そのまま後続に影も踏ませぬ楽勝。 続く東京記念も同じ戦法でギリギリ粘り込み重賞連覇。
 そして東京大賞典へと駒を進めたが、球節に不安が出て獣医師、装蹄師も無事に完走できるかは保証できないと。出否は調教師とオーナーに委ねられた。オーナーはファン投票で選ばれただけに出走させたいと決断。
 向正面で行きたがり鞍上は手綱を緩めたが、3角で逃げ馬の後で折り合い、直線追い出すと一気に引き離してゴールイン。頂点を極めた一瞬だった。
 管理されていた荒山徳一調教師は調教が終わる頃になると、若い騎手に「朝メシを食べに来い」と声をかけるやさしい、面倒見の良い人だったのだが、勝徳騎手にとっては父である前に厳しい師であった。(愛弟子の久保與造調教師が「うちの先生は日本一の調教師になりますよ」と常々話していたのが思い出される。)
 存命であれば「今の成績に満足している様ではダメだぞ」と叱責していたはず。しかし、私にははっきりと見える。「勝徳、頑張っているな。でも、もっともっと大きくなれよ」と天国で微笑んでいる父の姿が・・・。

解説者 吉田寛之

第54回 東京大賞典(2008/12/29 勝ち馬:カネヒキリ 騎手:C.ルメール)

 私のベストレースは08年の東京大賞典。10頭立てで行われたが、そのメンバーが豪華。
 1番人気に支持されたのは、その年のフェブラリーSと園田で行われたJBCクラシックを制したヴァーミリアン。2番人気は前走でジャパンカップダートを制し、復活を果たしたカネヒキリ。3番人気はその年のジャパンダートダービーを制したサクセスブロッケン。4番人気はその年の帝王賞を制した地方馬代表格のフリオーソ。5番人気がその年のかしわ記念を制したボンネビルレコード。6番人気がその年のマイルチャンピオンシップ南部杯を制していたブルーコンコルドと錚々たるメンバーだった。
 レースはブルーホークが逃げ、2番手にサクセスブロッケン、好位にボンネビルレコードとカネヒキリとヴァーミリアン、中団にブルーコンコルド、フリオーソといった展開。直線は一旦サクセスブロッケンが先頭に立ったが、これを外からカネヒキリとヴァーミリアンが2頭で交わし、ゴール前2頭の叩き合いを制したのはカネヒキリ。サクセスブロッケンが粘り込んで③着を確保し、差してきたブルーコンコルドが④着で、同じくフリオーソが⑤着。早目に後退したボンネビルレコードはそれでも踏ん張って⑥着。
 これだけその年の実績馬が揃ってのレースは今後も行われるかどうかだが、今年もそれ以上の白熱したレースを期待したいものだ。

編集部 山形宗久