image

image

2017年上半期で競馬界の最大のトピックスは的場文男騎手地方競馬通算7000勝達成だろう。史上2人目、還暦での達成は多くのメディアで取り上げられ盛り上がりをみせたが、そんな的場騎手が思い出のレースとしていくつかピックアップした中に、2007年帝王賞があった。

ボンネビルレコードは2004年10月大井競馬場でデビュー。新馬戦快勝後なかなか勝ち星に恵まれなかったが、羽田盃5着、東京ダービー4着、ジャパンダートダービー3着。クラシックは勝てなかったが、しっかり真夏の黒潮盃で重賞初制覇を飾る。その後重賞タイトルを増やしたが、ライバルにヴァーミリアンやブルーコンコルド、カネヒキリ、タイムパラドックスなど挙げ出したらきりがないほど名馬がひしめく黄金期のため、交流重賞では歯がゆい善戦が続いていた。そんな中、2007年金盃1着後に美浦・堀井雅広厩舎へ移籍。慣れない環境、芝レースへの挑戦で心身ともに逞しく成長したボンネビルレコードはJRA所属として大井競馬場へ凱旋するのである。

2007年6月27日大井競馬11R第30回帝王賞。鞍上的場文男。コンビ復活。勝負服は違うが、やはりボンネビルレコードにはこの騎手でなければ盛り上がらない。それでも単勝オッズ21.0倍の5番人気。1番人気はブルーコンコルド。前走かしわ記念も快勝で地方では向かうところ敵なし状態。2番人気も天才武豊騎乗の良血シーキングザダイヤ、3番人気はフェブラリーステークスでブルーコンコルドを差し切ったサンライズバッカスと伝統レースにふさわしい好メンバーが揃っていた。
 8枠14番、外枠からの発走となったが、スタート直後スタンド前では内に切り込み、絶好位の6番手をキープするロスのない競馬。道中隊列はほとんど変わらず淀みなく流れ、勝負処を迎えた。4コーナー過ぎで逃げたトーセンジョウオーや前を行くシーキングザダイヤをさばくのに手間取ったものの、真骨頂“的場ダンス”を繰り出し、先に揚々と抜け出したブルーコンコルドを捕らえ、1馬身半差を付けゴール。イン強襲。まさかこんな強豪相手に…、と当時思ってしまったが、このレースに限ってはポテンシャルの高さが際立っていた。
 その後JRA所属馬として全国の競馬場へ出走したが、南関東への遠征レースは必ず背中には的場文男がいた。

今思い返してみると、競馬界を席巻するサンデーサイレンス系のような煌びやかな血統ではないにしても、父アサティスからダートで活躍できるパワーやスタミナを、母父マルゼンスキーからは強豪馬相手でも太刀打ちできるスピードをしっかり受け継がれていた。何より10歳になるまで第一線で活躍できる強靭な肉体と精神力がなければ、ここまで立派な競走馬にはなっていなかっただろう。

2012年東京大賞典9着を最後に競走馬として終止符を打った。通算成績74戦9勝(重賞7勝)。

TCKでの“誘導馬”という第二の馬生も決まり、翌年の帝王賞で誘導馬デビューを果たした。現在も元気に現役馬を誘導するという大役を担っている。ぜひ、ボンネビルレコードに会いに来てほしい。

日刊競馬 鈴木宏哉