TCKコラム

TCK Column vol.74

福島県相馬市出身として被災地のために

~高野毅・誠毅騎手インタビュー~

TCK所属の兄弟ジョッキー高野毅・誠毅騎手は、地震の被災地である福島県相馬市出身です。そのお二人に地震当時の状況や現在の心境、今後の意気込みをお聞きしました。

■今回の地震について

毅・誠毅:
まずは、今回被災された多くの方々に対して心よりお見舞い申し上げます。

■地震が起きた当時はどうされていましたか?

誠毅:
当日は第3レースに騎乗して、地震のときは装鞍のところにいました。地震があって、すぐに安全な馬場側に出たんですが、L-WINGとか2号スタンド・3号スタンドの屋根がすごく揺れているのが見えました。

毅 :
僕も地震のとき、調整ルームの中にいました。
地震ですごく揺れたように感じたので、震源地は近くだと思ったのですが、テレビで東北地方の太平洋側が震源地と知って衝撃を受けました。
テレビで震源地を知ったとき、パッと実家のことが脳裏に浮かびましたね。
テレビでも相馬市の名前が出てきたんで、実家は大丈夫かなって。


<インタビュー中の毅・誠毅騎手>

■実家とはすぐ連絡がとれましたか?

毅:
地震があった後、実家に何度も電話をしてみたのですが、とにかく電話がつながらなくて・・・。心配は心配だったけど、親父なら大丈夫かなって。親父は強い人間だからって、妙な自信がありましたね。弟(誠毅)ならわかると思うけど(笑)。

誠毅:
僕も最初は電話がつながらなかったんですが、何度も電話していたら運よくつながって、その日のうちに実家の無事が確認できました。親戚も大丈夫だったんですが、入院している祖母が原発の影響で違う病院に避難していると聞きました。

毅:
まだ実家には帰れていないんですけど、交通手段も回復してきたので、僕も弟も近々帰ろうと思っています。


<高野毅騎手>

■地元の様子はどうでしたか

毅:
僕は地元の同級生や後輩とかにまめに連絡をとっていて、無事を確認できた友人も多いのですが、まだ連絡が取れていない友人もいます。

誠毅:
僕の同級生で海岸沿いに住んでいる友人がいたんですけど、その友人とは連絡がとれていなくて。津波の影響を受けた地域みたいなので心配しています。

毅:
僕と弟の出身の小学校・中学校が無事って話は聞きました。ただ、僕の出身高校は遺体安置所になっているそうで。こういう話を聞くとすごく心が痛みます。

■相馬野馬追にも参加されていたと聞きました

毅:
僕は2度参加したことがあるんですが、親父は野馬追のキャリアが長いです。
僕らが小さいころは、自宅で野馬追の馬を飼っていて、僕と弟でよく馬の世話をしていました。兄弟で騎手という職業を選んで、今こうして騎手をやっているのも、そのころの環境が影響していると思いますね。

誠毅:
僕は1度だけ、高校1年のときに相馬野馬追に参加したことがあるんです。それが、僕と兄貴と親父と3人で参加した唯一の野馬追だったんで、特別な思い出として残っていますね。

相馬野馬追… 福島県相馬地方で開催されている戦国時代の昔から一千余年の歴史を誇る日本を代表する伝統文化行事。国の重要無形民俗文化財に指定されており、TCKでは毎年、甲冑競馬が実施されている。

■大井競馬場でも毎年、相馬野馬追「甲冑競馬」が実施されています

毅:
相馬地方は被災地なので、相馬で野馬追が実施できるかわからないんですが、関係者が「今年も大井競馬場では相馬野馬追・甲冑競馬をやりたい」と言っていると聞きました。このようなときだからこそ、是非やってもらいたいですね。

誠毅:
甲冑競馬には、毎年知り合いが参加しているんですよ。だから、今年も実施してもらいたいですね。

毅:
あと、相馬野馬追の関係者もたくさんの方が被災されたそうなんですが、野馬追の馬のために被災地に戻って、えさを与えに行く関係者も多いと聞きました。「1000年続く相馬野馬追の歴史を絶やさないように」ってがんばっていると。
自分たちにも何かできないかって強く思いましたね。


<昨年の甲冑競馬の様子>

■街角での募金活動をされたそうですが

誠毅:
品川・大井町・新宿・立川と二人ですべて参加しました。自分たちは、被災地出身ですから、「被災地支援のために行動したい」という気持ちは人一倍強かったですね。だまっていられないですよ。
街角では、本当に多くの方に募金いただいて本当にありがたいと思いました。

毅:
自分たちはもちろんですか、周りのジョッキーも本当に熱心に募金活動をしてくれて。
また、大井競馬場でのチャリティーイベントなどでも本当に多くの関係者が被災地のために活動してくれたので、被災地を代表して本当にありがたく思いました。


<高野誠毅騎手>

■最後にTCKファンにメッセージをお願いします

毅・誠毅:
大井競馬は、4月18日~22日まで復興支援競馬として実施するんですけど、自分たちにできることは、被災地のため、そして自分たちのためにも一生懸命競馬することだと思っているので、より多くの方に大井競馬場に足を運んでもらえるとうれしいです。応援よろしくお願いします。


<騎手服姿の毅騎手(左)と誠毅騎手(右)>