TCKコラム

TCK Column vol.71

TCKジョッキーヒストリーWEB版 Vol.5 納谷 和玖騎手編

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納谷 和玖 騎手プロフィール
・所属厩舎
荒居 貴美夫
・初騎乗年月日
平成3年5月1日
・生年月日
昭和48年11月22日
・出身地
神奈川県
・2004年成績
427戦48勝(うちTCK47勝)
・2005年成績
417戦28勝(うちTCK26勝)

■ジョッキー人生七転び八起き

人生もレースもチャレンジ!
後悔しないために
ベストを尽くす。

4人兄妹の三男坊。競馬好きの父の隣に座って、まだ小さいころからよくテレビの競馬中継を観てました。中学校に入ってからは陸上部に所属。中距離の選手だったんです。とにかく走ることが好きで。でも、背が高くないこともあって、いつの間にかジョッキーへの憧れが強くなって。うん、僕にもできるんじゃないかと。好きな馬はカツラノハイセイコ、しぶいでしょ(笑)。不思議な縁を感じますよ、その父が中央へ移籍する前に、ここで走っていた名馬ハイセイコーなんだから。といっても、僕もサラリーマンの家庭に育ったし、周囲にはジョッキーを目指す友人は一人もいなかったですね。で、ふつうにJRAの競馬学校を受験して落っこっちゃった(笑)。それでたまたま母親の知人が、ここ(大井)の調教師の知り合いだったんです。もう迷いはなかったですね。「縁」のあった場所で一生懸命やろうと。デビュー前は岡部幸雄騎手に憧れていました。早くから世界へ目を向けていましたから。著書もほとんど読んでましたね。


幼少時代

 デビューしてから初勝ちは23鞍目の騎乗でした。同期にもかなり遅れをとったことを憶えています。カネマーチという馬でした。それまでは正直、「勝ちたい!」という焦りがありました。でも、勝つ時ってすべてがうまくいって、「鞍上でバタバタしなくても馬がやってくれるんだ……」と実感しました。デビュー1年目は6勝だったけど、2年目に28勝して「新人賞」をもらいました。そして3年目に16勝……そこまでは順調だったんですが。それからが下降線。勝てない日がずっと続いて。「一からやり直そう!」と決心して10年間世話になった厩舎を出ました。気持ちを切り替えて、状況を変えようと。


騎手幼少時代

いま振り返れば、「何かを変えたかった……」というのがホンネですかね。厩舎を移ってからは15勝、31勝、48勝(昨年は28勝)と勝ち星もふえました。でもこれに満足してるわけではないんです。これからもっと上を目指すには、とにかくあきらめないで瞬間瞬間、「最善を尽くす」こと。これしかない、と。

■オフの楽しみは

オフはすべて仕事のために。
カッコよすぎます?

 独身の頃はよく友人と食事に出掛けたり、今のカミさんと遊びに行ったり。一人旅も好きでしたよ。結婚して子供ができてからは、家族とぶらぶらと近所を散歩するだけで十分にリラックスできますから。この時間が僕にはとても大事なんです。仕事のことはなるべく考えないようにしてますね。オン・オフの気持ちの切り替えは大事ですよね。とにかく休みの日は、うまくリラックスできるように心掛けてるんです。これも「いい仕事」のためですからね。

■座右の銘

「人生はチャレンジ」

ふだんから自分にできることを勝利を目指してキッチリやる。そして、レースに勝つことだけに集中する。これが、僕にとってはチャレンジすること。でも、思うような結果が出なくても、反省はするけど、けっして後悔はしない。後悔は、先へ進む力にはならないから。

■ファンへのメッセージ

もっともっと勝って
信頼されるジョッキーに

まず、いまTCKに来てくれているファンに「ありがとう!」ですね。その中にきっと「大井を潰しちゃダメだ」と思って来てくれてる人もいると思うんです。他の競馬場が閉鎖に追い込まれてる現状は、僕らにとっても決して他人事じゃないですから。だから「TCKを支えてくれてありがとう!」なんです。何かファンから要望があれば、騎手の立場でできることなら、それに応えていきたいと思ってるので、これからも応援してください。「とくに納谷を!(笑)」。また、レースではどんな状況になっても最後まで諦めずに頑張りますので、そういうところを見て欲しいな。連対率はまぁまぁだと思ってるんだけど。これに満足しないでもっと勝ち星をあげて、ファンに信頼されるジョッキーを目指してるので、よろしく。

■感動の名馬

雨のシャワーが
初重賞勝ちを
祝ってくれた

 思い出の馬ですか?やはり一番は初重賞制覇をプレゼントしてくれたジョイフルハヤテですね。この馬が高橋三郎厩舎に転厩してから手綱を取るようになったんです。東京ダービーは13着と惨敗でしたが。黒潮盃のときは凄い雨で、馬場も不良でした。もう人気なんか全くなくて(11番人気)ノーマーク。思い切って逃げました。そうしたら4コーナーの手前で的場さんのナイキゲルマン(1番人気)がきたんですよ。でも、無理せずに流れに乗れたから差し返せたんですね。ゴール前はまた詰め寄られましたけど。ハナ差残ってたけど、勝利に確信がもてなかったからガッツポーズはできなかったなぁ(笑)。3月の特別戦に初めて乗ったときもナイキゲルマンを抑えて逃げ切っていたんです。だから、的場さんもらくに逃がすとマズイと思ったんでしょうね。レース後の表彰式ではげしく降る雨が頬に当たり気持ちよかったのを憶えています。ほんと祝福のシャワーって感じでしたから。


ジョイフルハヤテ

 重賞勝ちの意味ですか?ジョッキーとして超えなければいけない壁ですから。勝っていればいるほど、自信になると思う。でも10年以上乗ってですから、遅かったですね。

引退まで3勝しかできなかったけど、ケージーローズという牝馬にはいろいろと勉強させられました。思い入れの強い馬ですね。デビュー戦から25戦ずっと手綱を取ってましたし。重賞路線でも活躍したんだけど、とにかく脚の使いどころが難しい馬で。レースでいかに勝つか、その研究をするキッカケとなった馬なんですよ。惜しいレースも実際にいくつかあったしね。でも、この馬に出会ったおかげで、普段の調教もふくめてどうすればレースで勝てるかを意識するようになったんですよ。この経験があるから今の自分があるように思えますね。これからは一人のジョッキーとして東京ダービーやJBC、東京大賞典など、ビッグレースへの騎乗、そしてこれらのレースを制覇する自分をイメージしながら、普段のレースも騎乗したい。


ケージーローズ