TCKコラム

TCK Column vol.60

JDD直前リポート

 こんにちは。高橋華代子です。暑くなったり涼しくなったり寒暖差が激しい東京ですが、皆さんの地区はいかがでしょうか?
 早いもので今年7回目を迎えるJDD。実は、わたしが南関東の世界に入ったのも、ちょうど7年目。そう、JDDの歴史とともにわたしも時を刻んでいます。オリオンザサンクスが優勝し、2着にはオペラハット、3着はワイドの帝王サマーシャドウ。南関東に関わるものとしては、興奮状態の結果となった第1回。7回目の今年は、強力な中央勢がどーっと集結する年とでも言えましょう。各馬の直前情報をたっぷりとご紹介していきます。
(執筆日7月11日)

<JRA中央競馬>

■ カネヒキリ  JRA 角居勝彦厩舎
主な重賞実績:ユニコーンS優勝


ユニコーンSのパドック

 大物が登場します!砂のディープインパクトという異名をもつカネヒキリ。つい先日、同厩舎のシーザリオがアメリカンオークスを勝ったばかりということで、お祝いの花に囲まれた部屋から、角居調教師が出てきました。
 開業5年目を迎える角居調教師にとって、大井は思い出の競馬場の一つ。実は、助手時代の担当馬ナリタハヤブサで帝王賞を勝った経験があるんです。調教師としては、カネヒキリとともに大井初参戦。
 「ナイター競馬はやってみないとわからないですからね」と冷静に分析していましたが、「以前のように、レースや追い切りの後もガタッと疲れが出なくなりました。ユニコーンSよりも上積みはありますよ。この馬の力をそのまま出せば、いい結果がついてくるでしょう」ともちろん自信を持っています。
 ユニコーンSの後は、いつものようにグリーンウッドへ放牧に出し、2週間前に厩舎に帰厩。予定通りの調教をこなし、満を持して登場してきます。
 「器用なタイプではないので、マイルよりも2000メートルの方が競馬はしやすいでしょう。力もあるので、重い砂も大丈夫。この馬はビュンという切れ味がないんです。それよりは、パワー型で長くいい脚を使うタイプ。そこが、この馬のいいところですね。器用さが出てきて、体質が強くなれば、これからもっと強くなるでしょう」
 しばらくは芝よりも砂を主戦場にし、秋はダービーグランプリなど3歳砂の王道を歩んでいく予定です。
 カネヒキリという名前は、ハワイの言葉で雷の精という意味。ここまで数々の衝撃を与え続けてくれましたが、今度は大井競馬場で、どんなとどろきを起こしてくれるのでしょうか・・・

■ アグネスジェダイ  JRA 森秀行厩舎
主な重賞実績:ユニコーンS2着、兵庫チャンピオンシップ2着


兵庫チャンピオンシップのパドック

 兵庫チャンピオンシップでのこと。パドックに登場したアグネスジェダイは、汗まみれになり、ずーっと踊っているかのような派手なアクション。引いていた二人の担当者も大変そう。本来なら、そこですべてを使い果たしてしまったはずなのに、レースに行ってからがまた驚き。逃げてこその馬が大きく出遅れ。後方からの競馬も、1周目のスタンド前にはスーッと馬なりで先頭に立ちました。そしてそのまま押し切るかと思われましたが、最後にはドンクールに差されて、タイム差なしの2着。力のあるところは十分に見せつけてくれました。
 ただ、本来は完全なる逃げ馬。ポーンとスタートを切り、道中は自分のペースで逃げて、最後押し切るというのがベストな展開。今回ももちろん逃げ宣言です!「以前は、坂路のスタートですぐに、跳ね上がったり癖のあるところがあったんですが、最近では解消されて、走る方に集中してきました。ここ最近の中では一番の状態。逃げてくれれば、もちろん勝ち負けはあると思っています。2000メートルも自分の型に持ち込めればこなせると思っています。まだ未知の距離なので、逆に楽しみなんです」と久保調教助手。

■ ドンクール  JRA 梅内忍厩舎
主な重賞実績:兵庫チャンピオンシップ優勝、ユニコーンS3着


兵庫チャンピオンシップの肩掛け姿

 ダート戦6戦5勝。ユニコーンSで初めて敗北を味わうことになりました。「出し抜けくらっちゃったからねぇ。並んでいければ、かなり粘る馬なんだけど。相手は強かったけど、その辺りが影響したね」と梅内調教師。
 非常に大人しい性格で動じないタイプというドンクール。たしかに、兵庫チャンピオンシップのときに「あくびばっかりしていた」と梅内調教師は笑っていました。それだけどんな環境においても、しっかり自分の力を出せるタイプです。「そういう馬だから、環境が変わったり初めてのナイター競馬はまったく心配はしていません。2000メートルの広いコースは合うと思います。ソエなど心配することはまったくないから、今回もハードな調教を積んで、予定通りの調教ができました。また体重が減ったとしてもそれは心配ありません。今度こそカネヒキリに土をつけたいんだけどね。あとは展開面だけ。最後に馬体を併せられれば・・・」

<他地区>

■ セントレアリキ  名古屋 角田輝也厩舎
主な重賞実績:東海ダービー優勝


セントレアリキ


スコッツデール


チャコティー

 中央デビューしたセントレアリキは、名古屋に転入早々、東海ダービー馬になりました。東海3歳チャンピオンが大井に参戦してくれます。角田厩舎3頭出しの中で、現段階では一番の力の持ち主。大人しくて手がかからないタイプで、どこに行っても力をしっかり出せるのが強みです。
 スコッツデールは東海ダービー2着。まだまだ完成されるのは先のようですが、「将来は大物になりそう・・・」と角田調教師の期待も大!
 チャコティーは400キロ台で競馬をしている小柄な馬ですが、とにかくタフさがセールスポイント。中2日で競馬を使ったこともあるくらいの馬なんです(成績1着、3着)。
 そんな頼もしい馬たちを大一番に送り出してきた角田調教師。常日頃から「強い相手と戦って厳しいペースを味わうことは、馬たちを強くさせます。地元に帰ってからも、その経験をしっかり生かしてくれるんです」と言っています。全国各地の交流戦で常に名前が挙がる角田厩舎。その地道な努力が実を結んできて、今年はぶっちぎりの全国リーディング(91勝 7月10日現在)。角田厩舎、要チェックですよ!

<南関東>

■ メイプルエイト&ブラウンコマンダー 船橋 岡林光浩厩舎
メイプルエイトの主な重賞実績 : 羽田盃2着、東京ダービー2着、京浜盃3着
ブラウンコマンダーの主な重賞実績 : クラウンカップ優勝


エイト&渡邊調教厩務員


相変わらずカイバ桶をあげているコマンダー

 タフに走り続けてきたメイプルエイト。今回もいい状態をキープしています。「相手云々よりも、しっかり仕上げて自分の競馬ができるかがポイント。エイトはスタートセンスがいいから、中央馬が入った早い流れでも自分の競馬はできると思います。2番手あたりから積極的な競馬をさせたいね。520キロは切る体で競馬をさせたい」と岡林調教師。
 「中間の追い切りよりも動きがよくなって、息の入りもよくなりました。トモにハリが出てきたと思います」と渡邊調教厩務員。実はレース当日お誕生日を迎えるそうで(祝)。素敵な誕生日になるといいですね。
 いつも元気一杯なのがブラウンコマンダー。本追い切り後も、洗い場で元気に踊っていました(苦笑)。まだまだ走り足りないのかな?
 1キロでも2キロでも体が増えていればハナマルだった前走の東京ダービー(5着)。見事、ベスト体重440キロにもってきました。岡林調教師は「とにかく状態はいいですよ。中央馬が入ればペースは早くなるから、末脚勝負のこの馬向きになると思う。あと、誠二(左海騎手)が二度目というのも強調材料だね。楽しみにしています」

■ マズルブラスト  船橋 川島正行厩舎
主な重賞実績:羽田盃3着、東京ダービー3着、しらさぎ賞2着


洗い場にて

 「馬を怖がるところがあるのに、それでも馬群から抜け出してきたからねぇ。成長してきた」と東京ダービーを振り返る多田厩務員。それでも、羽田盃、東京ダービーともに、まだまだこの馬の力をしっかり出し切っていない!と不完全燃焼を訴えている陣営。内田騎手とのコンビで巻き返しをはかります。
 本追い切りに登場したマズル。曇り空でどんよりとしている天候の中でも黒光りした体は圧巻。追い切りに跨った佐藤裕太騎手は「今回も引き続きいいですね。楽しみにしていますよ」とニコニコ。
 洗い場に入ったマズルは、いつもより元気がみなぎっていました。大人しい印象があったんですが、どうしたんだろう・・・どうやらカイバを食べたかったみたい(笑) 洗い場から馬房に戻ったら、即効、カイバ桶に顔を突っ込んでいました。「カイバは残したことないよ(笑)」と多田厩務員。

■ ダンシングスキー  大井 宮浦正行厩舎
主な重賞成績:九州ダービー栄城賞優勝


九州ダービーゴールシーン

 九州ダービーを優勝し、堂々と九州3歳チャンピオンに輝いたダンシングスキー。6月1日、宮浦厩舎の仲間になりました。予定通りの調教は行えたものの、なんせ大井にやってきてから初レース。陣営の皆さんにとっても、不安と期待でいっぱいです。宮浦調教師は「追い切りは僕が乗りました。スピードタイプというよりは、スタミナ勝負のパワー型。直線の長い大井コースは、この馬には合っていると思うんだけど。一つでも上の着順が狙えるように頑張りたいです。このレースに出走することも凄いこと、嬉しい」開業2年目の宮浦調教師にとって、初めてのダートグレードGⅠ挑戦になります。
 厩舎にはすっかり慣れた感じのダンシングスキー。黙々と乾草を食べていました。その姿が何とも愛らしいこと。同じ3歳のライバルたちに比べたら、あどけない顔つきの癒し系。「ねっ?まだ顔も体つきも子供なんですよ。それだけこれから楽しみが多いということなんだけどね」宮浦調教師はダンシングスキーに、チューをしてました(笑)

★★まとめ★★

 昨年の2歳ダートチャンピオン・プライドキム。調子もよくなってきて、地方競馬の重い砂で戦えるのは、もちろん注目。きさらぎ賞の勝ち馬、コンゴウリキシオーの参戦も盛り上げてくれそうですね。初めてのダートコースになりますが、陣営としては一度ダートを使ってみたかったそうです。筋肉質の体でパワフルな走り。楽しみです。地元のボンネビルレコードはしっかりカイバを食べて順調ということですし、キョウエイペガサスはタフさが出てきたということ。
 さすがこの大一番、みんないい状態で出走してくれそうです。3歳春のダート競馬総決算、7月13日午後8時15分発走です!

高橋華代子
東京シティ競馬中継レポーター
厩舎関係者にファンも多い。