TCKコラム

TCK Column vol.58

東京ダービー注目馬の近況

南関東競馬関係者たちの夢・・・東京ダービー。今年は6月8日(水)に行われます。51頭目の東京ダービー馬誕生が刻々と近づいてきています。今回は有力馬たちの現在の近況をたっぷりとご紹介していきましょう! (5月31日現在)

■ シーチャリオット  船橋 川島正行厩舎 牡3歳
父 Seeking the Gold 母 Neptune’s Bride
母父 Bering
・馬主:ダーレー・ジャパン・レーシング (有)
・生産牧場:Darley(米)
・これまでの成績: 6戦5勝2着1回
・主な戦績:羽田盃優勝 京浜盃優勝 平和賞優勝 全日本2歳優駿2着


洗い場でのひとコマ


寝たらなかなか起きません

今年の東京ダービーは、何と言ってもシーチャリオットがどんな勝ち方をするのか・・・羽田盃に引き続きそこに注目が集まるでしょう。川島調教師も「今回も何も心配することはない。どのくらい突き放すのか楽しみにして欲しいねぇ。JDDではカネヒキリが出てくるだろうから、強敵だね。中央でもディープインパクトが3冠を目指しているように、地方でもシーチャリオットが!といきたいところだ」と満面の笑み。川島調教師の頭の中では、早くも東京ダービーを勝った後のことを考えている・・・。それだけ羽田盃をはじめ、これまでの勝ちっぷりが抜けているということもあるし、レース後も順調に調教を進めているからでしょう。そんなチャリオは相変わらずマイペース。よく食べてよく寝る。ニュージーランド出身のクリス厩務員は「人間と一緒で、馬もよく寝ているときは大きくなるねぇ。また背丈が伸びたかも」とチャリオのことを話していました。
先日のロケのとき、たくさんのスタッフがおじゃましました。ちょうど昼寝中だったチャリオはピクッともしない。目線はジーッとカメラにむいているのに、まったく起きようともしない。「なに、撮ってんだよ!」と睨みつけながら・・・。お馬さんたちは繊細な生き物。普通なら、いつもと違う雰囲気にすぐ起き上がる場合が多いのに、チャリオはそのまま・・・。時には「起きろー!」とチャリオの体を揺らしても起きないんだって(苦笑)。東京ダービーも断然1番人気になるでしょう。でも、こんなチャリオなら、きっと何も気にすることなく道中をマイペースで進めて、最後の直線はピューッと駆けちゃうんだろうなぁ・・・チャリオの寝姿を見て、思いました。
「すべてが高い能力の持ち主。地方競馬を代表する一頭になるよ」と以前から語っている内田博幸騎手。2冠目の東京ダービーは、どんなパフォーマンスを魅せてくれるのでしょうか・・・。

■ メイプルエイト  船橋 岡林光浩厩舎 牡3歳
父 カコイーシーズ 母 ノックダウン
母父 マルゼンスキー
・馬主: 節 英司
・生産牧場: 安達洋生(新冠)
・これまでの成績: 8戦4勝2着2回3着2回
・主な戦績:羽田盃2着、京浜盃3着


エイトを囲んで、張田騎手と渡邊厩務員

逃げ馬不在だった羽田盃。元々スタートのいいメイプルエイトの持ち味を生かそうと、好枠からポーンとハナに立ちました。道中はエイト&張田騎手の絶妙な逃げでペースは超スロー。断然有利に運んだレース展開の中、最後の直線には抜群の瞬発力でシーチャリオットが襲いかかってきました。張田騎手はその相手にズバーッとエイトの体を寄せつけ最後の攻防に出ました(エイトはこれまで、並んできた相手に抜かされたことはなかったため)。その相手にしぶとく粘るも、最後は競り落とされ2着・・・
勝ったチャリオは本当に強かったけれど、エイトの頑張りも非常に印象深いものでした。「たしかに相手はすごく強いよ。でも、出走が決まった時点で、どの馬にも勝つチャンスが与えられたわけだから。どうすれば勝てるのか・・・関係者はみんな考えるものだよ」と、レース前に岡林調教師が言っていたことを思い出しました。高くそびえたっている相手に、真っ向勝負に出たエイト陣営。負けはしたけど、エイト&関係者の皆さんの意地、勝負への執念、そして勝利へのこだわり・・・それを考えたら実はレース後、わたしはジーンときていたのであります。
レース後も順調で、羽田盃よりも状態を上げてくる余地は十分です。増えた馬体重(プラス11キロで518キロ)は成長分。ただし、あれ以上の増加にならないように仕上げられています。同厩舎のメンバー(ブラウンコマンダー・ワタリファイター)とともに、またエイトの意地が見せて欲しい!!

■ マズルブラスト  船橋 川島正行厩舎 牡3歳
父 ホワイトマズル 母 セーヌリバー
母父 ノーリュート
・馬主: 吉田 照哉
・生産牧場: 社台ファーム(千歳)
・これまでの成績: 6戦2勝2着3回3着1回
・主な戦績:羽田盃3着、ブルーバードカップ2着、しらさぎ賞2着


調教後はあくびばかりしています

中間追い切り(本追い切り前のもの)の取材に行ってきました。調馬手の中井さんが騎乗して単走で軽やかな動き。青鹿毛の黒光りする体からも、状態の良さが伺えます。「羽田盃の頃よりいいですね。モタモタしたところもないし、馬もしっかりしてきました」と、普段は物静かなダンディーな中井さんも明るいトーン。サプライズパワーやサクラハイスピードなどなど数々の名馬を担当している多田厩務員に引かれ、洗い場に戻ってきたマズルブラスト。体を洗ってもらいながら、ひたすらあくびばかり(苦笑)。「写真を撮影したものを見ても、マズルはアクビばかりしているのが多いんです(笑)。」と、ちょうど愛馬を見に来ていた一人のオーナーさんは目を細めていまいした。調教ではしっかり集中し、それ以外ではリラックスモード。普段からメリハリできていて、マズルはとってもいい雰囲気です。
「まさか羽田盃は出遅れるとは思っていなかったものなぁ・・・あの時がたまたま出遅れただけだから、ゲート練習をするつもりはないよ。距離が伸びていいタイプだし、積極的な競馬をさせたいね。今度こそ、うちの厩舎でワンツーといきたいね」と川島調教師。

■ ブラウンコマンダー  船橋 岡林光浩厩舎 牡3歳
父 コマンダーインチーフ 母 ツジノヒマワリ
母父 トニービン
・馬主: 小島 史代
・生産牧場: 北星村田牧場(新冠)
・これまでの成績: 8戦3勝2着1回3着2回
・主な戦績:クラウンカップ優勝


首のトレーニング中(笑)

岡林厩舎の個性派ナンバー1が、このブラウンコマンダー。行動がとにかくオモロイ(笑)。洗い場で体を洗ってもらっている時なんて、渡辺厩務員とケンカごっこをしているみたい。だからと言って、フーッと物思いにふけって急に静かになることもある。で、カイバを大人しく食べていたかと思うと、急に重たいカイバ桶を首で力いっぱい押し上げたりもする。そして、しばらくその状態で静止・・・。何を考えているんだろう(笑)。首のトレーニングだろうか・・・(笑)。こんな感じで、コマンダーを見ていると飽きない。この間なんて、30分近くもずーっと見続けてしまいました(苦笑)。非常に子供で激しい気性の持ち主。でも、レースにいけばその激しさは闘争心に変え、素質十分なところを見せています。まだまだ未知の魅力たっぷりのコマンダー。「あまり大きくない馬だから(420キロから30キロ)、クラウンカップの後は少し楽をさせたよ。その分、追い切り1本足りないかもしれないけれど、馬体は回復させることに重点をおいた。バテないで伸びてくるのがこの馬の持ち味。ワタリファイターもそうだけど、距離はもってこいだね。」と岡林調教師。

■ トウケイファイヤー  大井 矢作和人厩舎 牡3歳
父 スキャン 母 ワンタッチ
母父 ワッスルタッチ
・馬主: 東京都競馬(株)
・生産牧場: 千代田牧場(静内)
・これまでの成績: 9戦5勝2着2回3着1回
・主な戦績:ハイセイコー記念優勝、京浜盃2着


雨の中も頑張ってます!

2番人気に推されていた羽田盃。満を持して登場するもまさかの7着。これまでワイド圏内を一度も外したことのないトウケイファイヤーの初めて味わった試練になってしまいました。レース後心配になり、ファイヤーの元にいってみると、ファイヤーを引いた橋場厩務員と会いました。「どうしたんだろうね・・・一緒に走った馬たちは息をフーフーして帰ってきたのに、こいつはまったく乱れていないんだよ。走っていないんだよなぁ・・・」 結果は残念だったけど、ファイヤーは元気ということでひとまずホッと一安心。また先日おじゃましてみると、激しい雨の中もカッパを着てモクモクと運動中でした。東京ダービーは巻き返してもらわなくては!
20歳の有年騎手にとっても、いろんな意味で大きな経験になったでしょう。「羽田盃は人気の馬がいたし、まったく緊張しませんでした。ただ、超スローに流れたこともあって、1、2コーナーで控えたらファイヤーとケンカしながらになってしまって・・・最後はまったく走る気をなくしてしまいました。ファイヤーの力はこんなもんじゃありません。たしかに今回も断然人気の馬がいるけど、競馬に絶対はありません。ファンのためにも頑張りたいし、ファイヤーに何とか大きなところを取らせてあげたい。力は十分にある馬ですから。」ファイヤー&有年騎手の思い切ったレースを期待します!

★★まとめ★★

他にも、お父さんコンサートボーイ&おじいちゃんハイセイコーの血統をもつサウンドイモン。大井の宝物が今回も登場予定。また、クラウンカップ大敗後も大井で強いところを見せたキンセイブレイド。出走してきた際には要チェックです!
早く、東京ダービーこないかなぁ・・・指折り数える日々を過ごしている皆さん!!
各馬とも、順調に調整が進められていますよ。たしかにシーチャリオット一色の東京ダービーになりそうですが、レースは始まってみなきゃわからない。おそらく今のところはフルゲートになりそうですが、16頭それぞれが自分の持っている力をしっかり出して、悔いの残さない競馬を見せて欲しいと思います。持っている力を出し切るって、実は本当に大変なことだから・・・だからこそ、それが実現できれば、本当に素晴らしいことだから・・・・勝つ馬がいれば、負ける馬もいる。それが勝負の世界。でも、まずはこのメンバーに選ばれることが大変なこと。
皆さん、東京ダービーに出走するお馬さんたちを、大井競馬場で応援して下さい!みんなにとって、一生に一度の晴れの舞台を見に来てあげて下さい!その勇姿を、目に焼き付けてあげて下さい!

高橋華代子
東京シティ競馬中継レポーター
厩舎関係者にファンも多い。