Café Americano

Café Americano vol.25

第25回 2017年を振り返って。BC・香港国際競走回顧

もう1年が終わります。

 皆さん毎年恒例ですね。「あー、もう12月だよ。もう1年終わるよ~早いよね~」とお互いに言い合うのは。後述しますが、私は12月前半は忙しく動いており、また終わった後も時差ボケに悩まされていて、これから突入するクリスマス(米国ではカップルではなく家族で過ごす)のシーズンに少しタジタジな感じ。特に今週末(執筆日:12月21日)は、クリスマスギフトのショッピングで走り回るかと思うと・・・恐怖ですね。

ブリーダーズカップは意外な結果の連発に

 ご覧になっていた方も多くいらっしゃったかと思いますが、今年のブリーダーズカップは意外な結果(馬券配当で言えば大波乱)に終わったレースが多く見受けられました。

 個人的な見解を口にさせて頂くと、もちろん穴馬として評価されていた馬が激走したレースもあるのですが(BCダートマイルなど)、デルマーという特殊な形状を持つ競馬場から、スピードやスタミナの絶対値のみならず、馬自体の器用さや折り合いをつけられる気性、騎手の腕なども勝因となったケースがあったのかなと推察しています(1)。

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 例えばフィリー&メアターフは、デルマーの芝コースで2,000mのスタート地点が取れないことから、今ではあまり見なくなった内馬場の引き込み線からレースがスタート(2)。少し走ってから中途半端なコーナー、その直後に1コーナーを迎えるので、全部で2.5ターンくらいすることになります。日本調教馬はそれなりのコーナー数を経験しているのであまり苦にならないかもしれませんが、米国の芝ではせいぜい3回。芝の長距離が得意という馬で4回行くかどうかです(サンタアニタの芝2,400mはヒルサイドコースを降りてきますが、これは非常に特殊)から、器用でない馬・未経験馬には辛い展開になってしまったかもしれません。

写真2

 また、ダートマイルはスタート直後に1コーナー(3)。ターフスプリントに至っては1,200~1,400mのスタート地点が取れないので、1,000mの競馬に(4)。チャーチルダウンズも同様だそうですが、普段1,200~1,400mを走っている馬が、いきなり1,000m出走となると「少し忙しいな」と感じる馬もいるでしょうから、そういう競馬の得手不得手による差が大きく出るコース取りだったと思います。

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 で、私の方に話を戻すと、BCが終わった直後に状況は急展開。そんなターフスプリントの優勝馬と覇を競うことになろうとは思いもしませんでした。

番外編:香港国際競走に参戦

 全くもって米国競馬と関係がなくなるのですが、ご縁があって、今年の香港スプリントに参戦したJRA・齋藤誠廐舎所属・ワンスインナムーン号(牝4)のレーシングマネジメントをさせて頂く機会に恵まれました(5)。

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 招待枠をめぐっての香港ジョッキークラブとの交渉、招待決定後の突貫工事的な事務作業、ワンス香港到着後~出走~出国まで面倒を見させて頂いたり。海外馬が滞在する検疫廐舎地区では、前述のBCターフスプリント優勝馬・ストーミーリベラルとお隣だったので、同じ米国から来ている私もスタッフたちと懇意に。彼らは、南カリフォルニアの大規模な山火事被害に遭ったサンルイレイダウンズトレーニングセンター在廐の馬だったので、遠征途中から米国側のことも気にしなくてはならないという辛い状況の中での遠征でした(家や家族もいますから)ので、よく彼らを私とワンスの廐務員の鈴木さんで励ましていました(火事の影響で、彼の僚馬も数頭亡くなった大惨事になってしまいましたが、帰国後の彼は、今頃他の被害馬が避難しているデルマー競馬場にいるはずです)。

 TEAM ONCE IN A MOON の遠征自体はとてもうまく行きました。初めての航空機輸送・異国にも関わらず、ワンスは全く動じず、日々の調教をこなしていきました(6~9)。おかげさまで、黄色いゼッケンに「毎月一回」という広東語表記も有名になりました(10)。こんなにスムーズに行く遠征が他にあるだろうかと思うほど。チームメンバーは和気あいあいとして楽しく日々の仕事をこなし、ワンスは様々なパターンを組んだゲート練習やパドックスクーリングなど、慣れない土地での調教を一つ一つ、何も問題なくクリアしていきました。事故もありませんでしたし、本当に憂うことが一つもありませんでした。

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 レース当日のシャティン競馬場は、とんでもない数の多国籍な人間で溢れかえっていましたが、ワンスはここでも全く動じることなくパドックへ。名手、ザック・パートンを背に堂々たる行進(11)。オーナー御一行も大変楽しんでおられました(12。左:JRA・齋藤誠調教師、中:ザック・パートン騎手、右:オーナー)。

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 香港スプリントは、スタートして各馬の隊列が決まった後も香港馬のペニアフォビアに競り続けられる厳しい展開に。スタート後2ハロンを間断なく競ってくるのですから、これはマナー違反。最後は競りかけた方も自滅したのですが、完璧とは言えないスタートダッシュになってしまったワンスには辛いレースになりました。結果を残すことは出来ませんでしたが、レースに至るまでのプロセスにおいて、陣営は全く悔いなく進んでくることができましたから、その事自体は素晴らしいことだと思っています(13、レース直後)。

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 ケガもせずに帰ってきてくれたのが何より。レース翌日の夜には、日本に向けて香港国際空港から旅立ちました。この10日間、ずっと時間をともにしてきた持ち乗りの鈴木さん、そして最後は私になついてくるようにもなった、かわいいワンスインナムーン(14・15)。私個人の仕事としては、2017年の掉尾を飾る遠征となりました。

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 皆さんは、来年1年間をどのように組み立てていきますか?今年もいろいろと悲しい出来事が多くありましたから、2018年は平和な明るい1年にしていきたいですね。今週末は有馬記念、そして29日は待ちに待った東京大賞典!みんなで勝って、新しい1年を迎えましょう!

 Merry Christmas and Happy new year!

筆者:沼本光生
1980年東京生まれ。U.S. Equine, Inc., Sales & Operations Manager
http://www.usequine.com
香港の検疫廐舎では多くの強豪が滞在。欧州からはハイランドリール、ザティンマン、タリスマニック、米国は前述のストーミーリベラル。日本からはキセキ、スマートレイアー、ネオリアリズム、ステファノスなど錚々たるメンバー。その中でも欧州関係者からひと際目を引いたのはサトノアラジン。「なんだあれは、ドレサージュの一流馬みたいじゃないか」との声も。案の定、アラジンを担当してきたスタッフさんはベストターンドアウト賞を受賞。海外関係者が目を見張る馬を作れる国になってきたのは、日本という競馬パート1国として嬉しいことですね。