Café Americano

Café Americano vol.07

第7回 ケンタッキーってこんなとこ。フライドチキンだけではありません。

ブリーダーズカップも無事に終了。

 米国競馬最大のイベント・ブリーダーズカップ(BC)も無事に終了。今回のBCクラシックは、バイエルンの劇的な逃げ切りによって幕を下ろしました。今回の各種アレンジメントで(個人的に)わかったことの一つは、BC開催の前後に各種パーティが催されているため(ウェルカムパーティ、VIPパーティ、アフターセレブレーション等)、開催競馬場の苦労は「BCの競馬開催」だけではないということ。考えてみれば、世界からそれなりのステータスを持った人々が参集するわけですから、何もなく帰すわけには参りません。プログラムから拾えるだけでも、英・愛・秘(ペルー)・智(チリ)・加・仏国の馬及び生産馬が一同に会していました。日本も第4回ジャパンカップが8カ国から参戦したことがあるようですが、最近はどのレースも外国馬の日本出走は下火。その中で、毎年外国馬を呼び込んでいるBCの底力は大したものです。今年は、TCKの東京大賞典になんと米国サンタアニタ競馬場在厩馬・9頭が予備登録。それもこれも、大井競馬場とサンタアニタ競馬場の姉妹交流提携を、お互いに大事にしてきたことが大きな理由の一つであったのではないかと思います。
 国際関係・人間関係・仕事上の信頼も、勝ち取るには長い時間がかかります。ともすれば、交流事業はあっという間に風化しがちですが、2競馬場間の関係はより親密に、毎年の友好を深めています。今後、毎年大井競馬場の在厩馬が米国遠征するような未来が築けたらいいなと、心の片隅で楽しみにしています。

そろそろ、寒いケンタッキーに戻る時期。

 冬に差し掛かる、今頃の北海道は既に寒いのでしょうね。そろそろ牧場のお馬さんたちも冬毛が伸び始めてくる頃でしょう。大学時代、冬に1週間ほど育成牧場でアルバイトをしたことがありましたが、地面からの冷気が靴底を貫通して、冷気で足がしびれる1週間だった記憶があります。温泉に連れて行ってもらい、呑めないビールをジョッキで出され、フラフラになって宿泊。翌日未明に叩き起こされて牧場でのお仕事。いい経験させて頂きました。
 あの時厩舎にいた想い出深いお馬さんは、タイキポーラ。駄々っ子のお嬢様で、素人の私は近寄ることが許されませんでしたが、あの後、阪神競馬場で行われたマーメイドステークスを快勝。テレビの前で「あのポーラが!」と嬉しく思ったのも、もう13年前・・・。鞍上の安藤勝己騎手はもう既に引退。ポーラも多くの仔たちを輩出。あの時の大学生は、今30代半ば。時が経つのは早いものです。北海道の冬を思い出すと、そんな記憶がよみがえります。
 先月、ちょっとだけ「これからが我々の稼ぎどき!」というようなお話をしましたが、イコール忙しい、イコール出張多い、イコール・・・ということで、肉体的な負担が増える時期でもあります。普段はロサンゼルスの温暖な気候に慣らされている我々にとって、これからの半年間は身体にこたえます。もう11月のケンタッキーは寒いです。ホテルのフロントの方によれば、昨日夜間に雨が降り、今日(11月7日)の朝は気温が氷点下だったとのこと。日本から持ち帰ったヒートテック&ウルトラライトダウンジャケットが大活躍です。まだ2月のシカゴのような「日中も氷点下」の寒さではなさそうですが、ロサンゼルスの「シャツ&チノパン」的なビジネスカジュアルでは、凍えることは必至。ですが春先のケンタッキーは陽光燦々。自然の癒やしと喧騒を離れての休暇を取るには良いところです。そんな、レキシントン訪問時のことなどを皆様に紹介してみたいと思います。

シンシナティのスペルってわかります?

 4月のキーンランド2歳トレーニングセールに訪問した際、利用したのはシンシナティ国際空港。少し覚えるのが大変なCincinnatiというスペリングです。個人的にはなかなか覚えづらく、未だにスペルチェックに引っかかります。アメリカ人の中ではCinci(シンシー)と呼んでいる人もいます。オハイオ州との州境にある空港なのですが、そこから1時間半程ドライブしてレキシントンに到着。さすがに馬産地。馬をモチーフにした看板やら何やら、たくさんあります。車のナンバープレートのデザイン(アメリカは各州で違う)も馬が書いてあります。郊外を走ると、ただひたすらにこんな景色が続いて、続いて、続くわけです(写真1)。仕事に戻って・・・キーンランドの競り場はこんなイメージ(写真2)。

写真1
写真2

バイヤーたちの熱いバトルがここで繰り広げられているわけですね。仕事で来たにも関わらず、思わず観光客になってしまったのは、当社業務を行なっているサークルオー・ファームを訪れた時のこと。レキシントンの東に位置するパリス(Paris)にあるのですが、パリスのダウンタウンは、なんとなくヨーロピアンなのです(写真3)。ヨーロッパ好きな私にとってはそれもいい目の保養だったのですが、驚いたのは街中の装飾?演出?というのでしょうか、それらに名馬の蹄鉄が使用されているのです。私が撮影したのは大種牡馬・ミスタープロスペクター(写真4)。今や世界にその根を張る血脈ですが、その蹄鉄が地面に埋め込まれているのです!ミスタープロスペクターは、パリスにあるクレイボーンファームで、種牡馬生活を送ったからなのでしょう。こういった風景は、さすがに世界一の馬産地ならではという感じですね。日本でも、記念碑のようなものを作るよりファンが名馬を身近に感じられる、こういったモチーフがあってもいいかもしれません。

写真3
写真4

 4月のキーンランドでは、時間に少し余裕があったのでケンタッキーホースパークに行ってきました。この場所について言えることは、とにもかくにも「馬」です。いろいろな種類の馬が繋養されていたり、モチーフは全て馬です。ちなみに今年は午年ということもあり、付近の教育機関で日本語の書き初めにトライしたようで、入館直後の壁に小学生と思しき挑戦者の書き初めが展示してありました(写真5)。かわいいですよね(笑)挑戦者の皆さんが、日本語の書き初めに四苦八苦している姿が目に浮かびます。展示スペースに足を踏み入れると、そこには馬と人間の骨格の模型が展示されていました(写真6)。馬のどの部位が、人間の部位のどこかというのが対照的になっています。

写真5
写真6

 進んでいくと、あまりなじみのないアラブ馬、重種馬、その他もろもろの展示があり、サラブレッドにこだわらない、馬そのものに親しむ場として作られているという印象を受けました。でも、やっぱりファンの一人として血が騒ぐのは競馬関係のもの。三冠馬・シアトルスルー関連の展示(写真7)や、過去の名馬・レキシントンの骨格展示(写真8)、はたまた小高い丘の上にあるホール・オブ・チャンピオンという放牧場には、名馬・シガー(残念ながら訪問後に亡くなってしまいました。合掌)や、ゴーフォージン等が繋養されており、個人的にはかなり楽しんでしまった(笑)訪問でした。展示から離れて出口に来ると、これまたレキシントン市内の道路の名前にまでなっている名馬・マンノウォーの銅像がサヨナラしてくれました(写真9)。

写真7
写真8
写真9

 全体がサラブレッドのためにあるような街、レキシントン。そしてそれらを取り巻く人たち。ぜひ皆さんにも、米国旅行の折にレキシントンを訪問して頂き、All for Thoroughbredな街を体験して頂きたいと思います。きっと競馬がもっと好きになります。
 来年、2015年のブリーダーズカップはここ、レキシントン・キーンランド競馬場です。

筆者:沼本光生
1980年東京生まれ。U.S. Equine, Inc., Sales & Operations Manager
http://www.usequine.com
そろそろ、余裕を感じる暇がなくなってきました。仕事では競り・馬輸送・馬輸送・馬輸送&渡日・・・?そしてプライベートでは引っ越しも迫っており、なんでこんなに気持ちに余裕のない11月を送っているのかわかりません(笑)忙しいとは心を亡くすという意味だそう。楽しみながらお仕事をしたいものです。